Artist Statement

Artist Statement in English

制作研究の理念:物質の積層と自律する形態

素材との対話と身体的プロセス
私の制作の根幹は、手びねりによって形成された基底材に対し、薄く引き延ばした土の「襞(ひだ)」を一枚ずつ積層させていくプロセスにある。この技法は、土という可塑性物質が手のひらや道具との接触によって見せる、偶発的かつ繊細な表情への洞察から深化させてきたものである 。指先で土を圧し潰し、薄い断片へと変容させる行為は、内面で分節化されない意識の断片を、物理的な質量と時間として外部へ定着させる「彫刻的行為」に他ならない 。

物質の不確定性と造形的必然
土は柔軟な可塑性を持ちながらも、乾燥や焼成の過程で不可避な収縮や変容を伴う不確定な素材である 。私はこの素材固有の性質を、制御すべき対象としてではなく、造形を次の段階へと導く積極的な触媒(カタリスト)として捉えている 。積層される襞の一枚一枚は、身体的痕跡を留めながら、同時に土そのものの物質的限界を露わにする 。この自身の意志と物質の偶然性が交差する地点にこそ、立体表現としての真実味が宿ると考えている。

原始的な塊から自律する生命体へ
初期の研究においては、内面を吐露するように単純な球体へ襞を重ねる行為に没頭していたが、近年ではその関心は、形態が空間に対して持つ「動勢(ダイナミズム)」や「自律性」へと移行している 。襞の重なりが生む波のようなうねりは、やがてくびれや四肢を思わせる有機的なフォルムへと変容し、基底材そのものの構造を突き動かし始めた。現在は、作品を単なる感情の集積ではなく、制作というプロセスを経て自己から分節され、独自の生命感を持って空間に介在する「自律した生命体(Life-forms)」として位置づけている。

彫刻的言語としての沈黙と対話
私は、瞬時に言語化することが困難な事象を、土という素材を通じて時間をかけて組織化し、再構築していく。この制作における重層的なプロセスは、自己と世界との関係を問い直し、沈黙の中から新たな造形言語を紡ぎ出すための不可欠な研究課程である。陶という素材が持つ物質的・歴史的文脈を背景としつつ、現代彫刻の地平において、人間の根源的な感覚に触れる立体表現の可能性を追求し続けていきたい。