Artist Statement
田中知美
私の作品は、手びねりで成形した母体の上に、薄い土の襞(ひだ)を一枚一枚重ね合わせることによって形づくられます。この手法に至ったきっかけは、机の上で手のひらや板を用いて土を押しつぶしたときに見せた、無防備で美しい表情に惹かれたことでした。その質感を手のなかで探るうちに、幾重にも重なる小さな襞は、私自身の心に留まり続ける感情そのもののように思えてきたのです。周囲との摩擦や孤立を恐れて、私は自分の考えや思いを言葉にして外へ出すことをためらいがちでした。口に出さないがゆえに、感じたことは消えることなく、心の中に薄い層となって静かに積層していきます。初期の制作は、そうして積もった内面を解き放つように、単純な球体の母体へひたすらに襞を貼り重ねる作業に没頭していました。
しかし、手を動かし続けるうちに、襞の大小が生み出す波のようなうねりや、曲線が孕む運動性そのものへと関心が移っていきました。怒りや歓びは心の中で複雑に混ざり合い、激しい奔流となり、あるいは静かに蠢きます。そうした胸の中の動きを追うように、母体にはくびれが生じ、手足のようなものが伸び、全体が自律的に動き始めました。それに連動して襞も成長し、より太く力強い帯のようなものへと変容していったのです。土という素材が持つ偶然の表情や歪みを受け入れながら対話を重ねるうちに、作品は単なる感情の吐露を超え、私の中から生まれた「新しい別の生命体」として立ち現れてくるのを感じています。
私は瞬時に自分の気持ちや考えを言葉にすることが得意ではありません。しかし、土に向き合い、時間をかけて襞を重ねていく過程は、私にとって指先を通して自分自身と対話し、内面を深く見つめ直すために欠かせない時間です。こうして生み出された生命体のような作品が、観てくださる方の心に静かに響き、その人自身の内なる何かを呼び起こすきっかけとなれば幸いです。
