私の作品は、手びねりで形成した母体の上に薄い襞を一枚一枚貼り付ける事によって作られている。 この方法で作品を作り始めたのは、机の上で土を手のひらや板で押しつぶした時の表情が美しいと思ったことがきっかけだ。この表情を活かして何か作れないかと土を手の中でもて遊んでいるうちに、小さな襞は自分の心に留めている感情のような気がしてきた。私は批判されたり孤立したりすることを恐れて、自分の考えや思いを外に出さない事が多い気がする。口には出さない故に、考えたり、感じたりした事が、心の中に積層していく。最初は、積層した自分の内面を次々と吐き出すように、ただただ襞を貼り付ける作業に没頭していた。手びねりで作る母体も単純なボール形で、作品の完成形をどのような物にしようかとか、見た人がどのように感じるかはあまり考えていなかった。
しかしいくつか作品を作るうちに、襞の大小によって出来る波のうねりのようなフォルムや、曲線で表現される動きに興味の対象が移っていった。怒りや喜びは、常に複雑に心の中で混じり合い、激しい流れになったり、怪しく蠢いたりしている。そのような胸の中の動きそのものを形にできないだろうかと思うようになった。それによって、くびれができたり、手や足のようなものが伸びたりするなど、襞をつける前の母体のかたち自体が動き始めた。さらにそれに連動して襞にも変化が現れ、より太く大きな、襞というより帯の ようなものが生まれた。これは小さく薄い襞の成長したものだ。
今は自分の作る作品が、ただの吐き出された感情の寄せ集めではなく、私の中から生まれた新しい別の生命体であるように意識して作っている。
私は自分の気持ちや考えを外に出さない事が多いと前述したが、それは、短時間で言葉に表す事が得意でないという意味でもある。しかし、作品を作ることで、時間をかけて、整理して表現できるような気がする。土で作品を作るための様々な過程は、私にとって自分に向き合い、考えや気持ちを整理し、表現するために必要なものだ。そうやって出来上がった作品が少しでも他の人の心に響くものであれば嬉しいと思っている。